ふるさと
ふるさと ライアー編曲&演奏:工藤咲良
日本人ならば、この曲を知らない人はいないのではないでしょうか。1914年(大正5年)に初めて教科書に掲載されたそうです。西洋音楽が日本に入って来てまだ日も浅いこの時代に、珠玉のようなたくさんの唱歌が生まれました。その多くが、今も尚、歌い継がれています。
「山は青きふるさと、水は清きふるさと…」というこの曲の歌詞の情景が浮かぶように、素朴な和音のみを使って伴奏をつけました。「素朴な和音」とは、主要三和音(I. IV. V)、この曲に選んだハ長調では、ドミソ、ファラド、ソシレの三種類だけです。属七和音やドッペルドミナント(またの機会に説明します)のような、モダンな和音は避けました。
もうひとつ、意識したことは、5度音程の響きを出来るだけ多く使うこと。例えば、ソーソーソードーレミ・ファーファーレードーのファーファーレードー。このメロディの下にはファーラーソーミーという低音をつけました。ファーラーシードーとつけても和声学的には間違っていませんが、ドーという主音に行きたい緊張感を引き出す「導音」シの音は使わずに、故郷のようにゆったりとそこに居てくれるように響く、レの5度下のソの音、そしてドの下には「これから歌が始まるよ」と誘いかけるような6度下のミを使いました。もしドの下に4度下のソの音をつけたら、宙に浮いたようで、まったく終止感がありません。かと言ってオクターブ下のドの音をつけると、あまりにも完結し過ぎてしまい、歌の前奏としてはどうも合わないのです。曲の途中にはホルン5度(「ライアーのための編曲の裏技!」を参照)も使っています。
この曲は三拍子です。行進曲(マーチ)も三拍子です。一歩間違うと三拍子の曲はマーチのように快活に、もっと間違うと行進曲のように勇ましくなってしまいます。乱暴にもなりがちです。それを避けるために、伴奏は流れるような動きにしました。この動きを、静かに流れる川のように、力を抜いて滑らかに演奏してください。また、決して急がず、1フレーズ終わるごとに余韻を聴いて、深く息を吐いてください。
私は基本的にすべて右手で弾きますが、メロディの途中のミの音は、左手の2の指を使うとらくかも知れません。
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