指使いは、3小節めと10小節めの〇が付いた音符のみ左手。あとはすべて右手です。
これは、ト長調の曲です。メロディの下に和音番号(I. IV. V. VI)を書きました。和音番号の読み方は下に表記しましたので参照してください。それぞれの和音に「はたらき」があります。
大きく分けて3種類あります。
トニカ:I. VI ドミナント:V. V7 サブドミナント:IV
トニカは「おうちに帰って来た状態」「落ち着いた状態」。ドミナントは「おうちに帰りたくてしかたがない状態」、つまりトニカへの誘導力を持っています。サブドミナントは「天に向かって開かれた状態」「両腕を大きく開いた状態」… 言葉で表現するのはなかなか難しいですね。
さて、この曲の編曲にあたってまず考えたこと。これは、1779年に作曲されたドイツの歌です。日本人にとっての「ふるさと」のように、誰でも知っている曲です。歌詞は、「月が昇った。星々は夜空に冴え冴えと輝く。森は黒く、沈黙を守って立っている。そして草原から白い霧が幻のように立ちのぼる。」 自然の美をつづった詩。人々に愛され歌い継がれてきた素朴な歌。
そう考えた時、できるだけ和音をシンプルにしようと思いました。歌の旋律が引き立つため、そして、素朴さと静けさがこの曲を包むために。
① 最初の音には敢えて和音を付けませんでした。西洋音楽のアウフタクト(1小節目が始まる前に付属された音)は、例えばThis is a pen.の a や、in the morning の in the に当たる弱拍、次の音に飛び込むための踏みきり台みたいなものだからです。だから、弱く弾かないと、曲の拍子がぜんぜん分からなくなって、のっぺらぼうな演奏になってしまう。苦労して弱く弾くくらいなら音の数を減らしてしまえばいい!というのが私のもくろみです。
② Vの和音ですから、レファ♯ラにしても良かったのですが、ここは敢えて、第三音のファ♯を抜きました。すると、ホルン5度という、ホルンの二重奏でよく出て来る「通りすがりの宝石のような完全5度」が現れます。森や草原の感じをよく出してくれますね。
③ ここは和音の下のミの音をタイにして、一度だけ弾けば良いようにしました。ライアーは響きの長い楽器です。一度弾いた音は止めない限り、1小節間は響き続けます。ですから、私は、1小節内で同じ音を2回弾くことは極力避けます。
④ この音で1フレーズが終わるので、Vの基本形「ソシソ」など、ソの音を一番下に持ってくるのが普通ですが、ここは「次に行きたい」という気持ちを高めるために第三音が下に来る、不安定な響きを選びました。
⑤ 私は、ライアーでメロディを演奏する時には、基本的に左手は使いません。特に、高い音域の白鍵側を左手で弾くと、どうしても堅い音になってしまいます。低音域には左手をよく使いますが、ここのように、一番の聴かせどころのメロディは右手でゆとりを持って柔らかい音で響かせたいです。
⑥ 低音高音へと音の幅が広がり、曲が盛り上がった後は、静かでシンプルなフレーズを入れたい… そのため、この部分は下の音はミに留まり、ミの音の響きの中で、最初は短調(VI)そして希望の光である4度(IV)と、上の旋律によってハーモニーが移ってゆき、再びホルン5度に落ち着きます。
だいたい、以上のようなポイントを意識して編曲しました。
では、対比として、1番めに収録したアレンジの楽譜の一部をご紹介します。
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